
スケルトン物件と居抜き物件の工事価格の比較事例 Vol.2
今回は「スケルトン物件」の事例を写真とともにご紹介します。
スケルトン物件といっても、物件によってさまざまなスケルトン物件があります。
例えば、
- 何もない完全なスケルトン状態。
- 一部、壁や天井にボードが残っている状態。
- 空調機や給湯器などの設備が残っている状態。
- トイレとミニキッチンがある、事務所仕様の状態。
など、いろいろあります。
そのため内装・設備・厨房などすべて一から造るイメージですが、実際には一部は既存のものを利用できたり、逆に利用できない場合はスケルトン物件でも解体撤去工事が発生することもあります。
事例①:BISTRO&WINEBAR EMION(2017年5月 竣工)
京王井の頭線の浜田山駅から徒歩5分ほどのところにある「BISTRO&WINEBAR EMION」。ビストロでありワインバーでもあり、食事だけを楽しむお客様・ワインを楽しむお客様・両方とも楽しむお客様、楽しみ方を幅広く受け入れたお店です。
マンションの角地に位置し、2面が道路に面した立地を活かした、パリの街角にあるビストロのようなデザインです。
最初に、工事前の状態の写真です。
前テナントは喫茶店(料理にも少し力の入った)と聞いています。
店内はコンクリート打ちっぱなしの何もない完全なスケルトンの状態です。
ファサードは3面がブロンズのアルミサッシとガラス窓の状態で、この窓面はそのまま利用できました。
またテントの骨組みも利用できる状態で残っていました。
設備は給排水とガスの配管と電気(電灯と動力)が店内に引き込みまでされている状態でした。
次に、工事後の状態の写真です。
店内の客席部分はスケルトン天井を活かし、天井ボードを貼らずにコンクリートを黒く塗装。天井を目立たせない仕上げです。
2面の窓は店内側はそのまま活かし、ファサードには腰壁を造作。ワインレッドのテントと合わせて、パリの街角にあるような雰囲気を演出しています。
事例②:Bar Mi Casita(2018年2月 竣工)
JR池袋駅北口から徒歩10分ほどのところにある「Bar Mi Casita」。ビル1階正面の歩道から階段を下ったところにある、地下1階のガールズバーです。
最初に、工事前の状態の写真です。
前テナントは飲食店と聞いています。
天井は前テナントのボードが残っており、一部照明器具も残っている状態でした。また天井のふところ(天井ボードの上の見えない部分)には古いダクトの配管やもう動かない給排気ファンも残っています。これらは天井をすべて解体し、設備も仕上げも新しく造り直しが必要な状態でした。
壁面も塗装・ボード・タイルなど前テナントの仕上げが残っている状態で、これらもそのままでは使えません。一部解体したり、一部は上からボードを貼るなどの工事を行います。
トイレもかなり年季が入ったトイレで、出入口の位置もよくありません。これも解体を行います。トイレの壁はコンクリートブロックで造られていたため、解体する範囲は最小限にとどめましたが、それでも大変な作業です。
設備は給排水とガス管の引込がありました。電気は電灯と動力ともに引込はありましたが、電灯の容量が不足していました。幸いビルの屋上から地下1階までの配線は太いものがきていたため、メーターや分電盤の交換工事で済みそうです。給排気のダクトは上述した通り、古い配管はすべて解体し新しく配管をしなおしです。
次に、工事後の状態の写真です。
天井はすべて解体し、カウンターの内側(キッチン側)は下がり天井を新しく造作し白で塗装、バックバーが明るく映えるように設計しました。入り口のドアを開けると、真っ先に目に飛び込んできます。
客席側の天井は解体して出てきたコンクリートの天井を黒く吹付け塗装を行い、天井の低さを感じにくい仕上がりになっています。
壁はぐるっと一周ボードを新しく貼り、剥がれ落ちたようなまばらなレンガ壁に仕上げています。地下1階の薄暗さを活かし、ブルックリンの倉庫のような雰囲気を醸し出します。
トイレも床・壁・天井の仕上げと便器・手洗器をすべて新しくし、完全に生まれ変わりました。
また地下物件なので給排気工事とても大事。
酸素不足にならないようにしっかりと計算し、お店の広さと想定されるお客様や従業員の人数に見合った換気計画のもと、工事を行いました。
事例③:LUNE(2022年11月 竣工)
京王井の頭線の浜田山駅から徒歩5分ほどのところにある「LUNE Café&dining」。朝はモーニング、昼はカフェ、夜はカフェバーとして営業しているお店です。
ビルの2階にあり、見上げた時に丸いコードペンダントライトが特徴的でよく目立つお店です。
最初に、工事前の状態の写真です。
前テナントは事務所、さらにその前は飲食店が入っていたと聞いています。
店内は天井がコンクリートむき出しのスケルトン天井で、壁は白く塗装されたボードが残る状態です。むき出しの天井の一部には前テナントが貼ったであろうタイルが残っており、これはお客様が希望するお店のイメージにも近いためそのままデザインとして活かして利用できそうでした。
ファサードは窓ガラスが大きく、ビルの2階ながら工夫次第では店内をよく見せることができそうな物件です。
設備は給排水配管と電気(電灯と動力)が2階店内に引込までされている状態でした。ガス管は1階にあるガスメーターまでしか配管がなく、そこから2階までの配管工事も行う必要がありました。
かなり年季が入ったビルです。
次に、工事後の状態の写真です。
店内は年季が入ったビルのスケルトン天井をそのままに、カウンターに古材を用いることで空間全体が少しレトロな暖かみがある雰囲気に。
ファサードは正面の道路から見上げると2階の店内がよく見え、店内の雰囲気が外からでもよくわかります。店名の「LUNE」はフランス語で「月」という意味。これを丸いコードペンダントライトで表現してみました。天井に残るタイルや鉄骨がこれに暖かく照らされ、コードペン自体の柔らかい雰囲気とあわせて、外からもレトロな雰囲気が感じられます。
また、間接照明を用いた看板もガラス越しに設置しています。
お店の前の道路を歩いている人がこの建物を見上げた時に、お店に入りたいと思わせるデザインにしました。
このようにスケルトン物件といっても様々な物件パターンがあります。
スケルトン物件と聞くとすべて一から造らなければいけないイメージがあるかと思います。
しかし、例えば事例①・③のように “もともとのスケルトンの天井をそのまま活かせる” のか、事例②のように “もともとの天井を解体しもう一度ボードで天井を造る” のかによって、必要な工事が大きく異なるのが分かると思います。そして、それに対する金額も変わります。
一概にスケルトン物件といっても、決して一括りにすることなどできないのです。

有限会社AIA/アイエィ
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