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スケルトン物件と居抜き物件の工事価格の比較事例 Vol.4

第4回目 「居抜き物件でも金額がかかる」場合の事例

今回は「居抜き物件でも金額がかかる」場合の事例を写真とともにご紹介します。
居抜き物件を見つけても、お客様がオープンさせたいお店のイメージやレイアウト、業態から離れた物件だと居抜きでも金額かかかってしまう場合があります。内装の仕上げやレイアウトがイメージと異なると、もともとの仕上げを一度壊して、また新しく造り直す必要があるからです。

例えば、

・設備が残っているものの古く、新しくしないと利用できない物件。
・仕上げやその下地の傷みが激しく、そのままではとてもお店として営業できない物件。
・残っている厨房区画や客席の壁の位置が、希望するお店と全く異なる物件。
・前テナントの業種・業態と開きたいお店の業種・業態が大きく異なりデザインが全く利用できない物件。

などの場合は、それらを一旦解体撤去してから新しいものを造りなおす必要がある為、解体撤去と新規造作と二重に工事が必要になります。

事例①:料理店吉田(2019年11月 竣工)

東京メトロ日比谷線の入谷駅から徒歩10分ほどのところにある「料理店吉田」。シェフが手掛ける本格フレンチと、ソムリエールが厳選したワインを気軽に楽しむことができる、隠れ家的な雰囲気のお店です。

台東区のこのエリアは、お店のオーナーが昔から縁がある場所でした。その場所でお店を開きたいということでエリアを絞って物件を探していたところ、この物件を見つけました。その後弊社も物件を見に行き状態を確認したところかなり内装や設備が古く、一度壊してやり直しの工事が必要な状態でした。その旨をお店のオーナーに伝えたところ、それでもこの場所でお店をオープンさせたいという思いが強く、居抜き物件ではあるものの工事がかなり必要なことを承知でこの物件でお店を造ることが決まりました。

最初に、工事前の状態の写真です。
前テナントはこの場所で何十年と続いた牛タン屋さんでした。
店内は、かなり年季が入っており、この年季の入り具合を活かした改装を行います。

厨房はかなり傷んでいる箇所が見受けられたので、すべてやり直しです。壁面は棚などをすべて解体し、壁のボードも剥がします。床は給排水の配管からやり直さなければいけないため、コンクリートを斫り(解体)、土が出てくるまで掘り起こしました。残っていた厨房機器も全て破棄します。
客席は左官の仕上げや木の板張り・レンガ貼りの壁はそのまま利用してレトロな面影は残します。カウンター上の収納は痛みが大きいため一部を解体、カウンターの天板も新しいものに交換します。

ファサードは窓前の樹木が生い茂っていたので掘り起こして処分します。

設備は残るものの中で唯一エアコンは利用し、それ以外は全て解体し新しくやり直します。

次に、解体後の状態の写真です。

厨房の中の壁はボードまで剥がし、下地を補強します。一部天井ももろくなっていたためボードを剥がし補強したうえで新しいボードを貼ります。壁も天井も、一時は木造の躯体が丸見えになるまで壊してから、新しいボードを貼って内装を作っていくほどの工事が必要な状態でした。

客席の壁はこの雰囲気を残すため、左官のコテ模様や貼ってある木材をそのまま残して活かします。

最後に、工事後の状態の写真です。

客席の左官の壁や貼ってある木の板やレンガはそのままに、カウンターや厨房内のタイルなどは完全に新しくなり、もともとのレトロな雰囲気は残しつつ、新しい清潔感のある綺麗なお店になりました。照明全て新しく照明計画を行い電球色のダウンライトに統一、レトロな雰囲気は感じられるが古臭さは感じられない絶妙なお店になりました。

事例②:魚はる(2023年12月 竣工)

京浜急行と横浜市営地下鉄の上大岡駅から徒歩10分ほどのところにある「魚はる」。「高級店ではなく、気軽に来てもらえるお店にしたい」—そんなオーナーの想いをかたちにし、敷居が高すぎず、それでいて落ち着いたデザインのお寿司屋さんです。

オーナーが横浜エリアに住んでおり自宅から通えるところで物件を探していたところ、この物件を見つけたと連絡を頂き、弊社も物件を見に行きました。物件を確認すると、内装はお寿司屋さんの雰囲気とは異なるデザインのため、解体をして新しく造り直してあげる必要がありました。しかし物件に面している道路は狭いながらも、この近辺に住む人々が上大岡駅へ向かう際に利用する道であったためかなり通行者が多く、集客が見込める物件と判断。この物件でお店をオープンさせることとなり工事がスタートしました。

最初に、工事前の状態の写真です。
前テナントは焼き鳥屋さんと聞いています。

店内は壁面に残る棚や照明は全て撤去、木の板や鉄板など貼ってあるものも全て剥がします。カウンターの腰の下地もこの位置では利用できないのでこれも解体。床は新しく造る厨房は水を流せるようにするため、厨房になる予定の部分の床を全て剥がします。天井は木の飾り梁の雰囲気がよいのでこれはこのまま残して利用します。

ファサードはお店のイメージと全く異なるので壁を全て解体してやり直すことにします。

設備はエアコンとトイレが残っており、これはそのまま利用します。電気も必要な容量の引込がありましたため、これも問題なしでした。

次に、解体後の状態の写真です。

店内は厨房部分の床を解体した後コンクリートブロックで区画し防水工事を行いました。これで水を流しても客席側に水が漏れることはありません。壁面の棚もすべて解体しスケルトンに近い状態になりました。

ファサードももともとの壁は全て解体し、新たに壁の下地から造作していきます。

最後に、工事後の状態の写真です。

店内はオープンキッチンで白木のカウンター席です。壁は白く塗装し、オープンキッチン内には白いタイルを貼り、白木と白色の明るい空間になりました。壁には寿司ネタを掲示できる札を取付。この札は上下がレールになっていて、その日のメニューに応じて簡単に差し替えができます。

ファサードはモルタル塗りの、和風で落ち着いた外観になりました。小窓からは店内がちらちらと覗くことができます。高さをランダムに配置することで、デザインだけではなく大人から小さい子どもまでお店の中を覗けるように工夫しました。お店の中が少し見えることで、入りにくさを減らし、入りやすく親しみやすい雰囲気になりました。

事例③:Bistro Alliance(2018年10月 竣工)

東京メトロ有楽町線の麴町駅から徒歩5分ほどのところにある「Bistro Alliance」。新鮮な魚介を使用したフランス料理とワインを楽しめる、本格的なビストロです。

弊社が物件を見に行った際には、すでにこの物件を借りることが決まった状態でした。現地でオーナーの話を聞くと、居抜きの内装を利用して希望のお店を造るのは難しく、居抜き物件とはいえ解体から工事が必要ということが分かりました。もし借りる前に相談を頂けていればこのあたりのアドバイスもできたかもしれませんが、それでもやっとこの場所で見つけた貴重な物件ですので、解体からでもこの物件でお店を造ることになりました。

最初に、工事前の状態の写真です。
前テナントは沖縄料理の居酒屋さんでした。

内装はカウンターやその後ろの収納棚、また窓際のグリット上の棚など、全て解体が必要です。

ファサードはガラス張りの為、外の工事はオーニングの貼り替えと看板の変更のみで済みそうです。

設備は厨房内の排気フードと客席のエアコンは利用できる状態でした。電気は電灯動力ともに引込はありましたがオーナーが希望する厨房機器をすべて導入すると容量が不足しています。調べると容量を増やすにはビル自体の引込から増やす工事が必要で、かなりの費用がかかってしまうことが分かりました。オーナーと打合せを行い、一部の厨房機器の導入を断念し、現状の電気容量で利用できるように調整をしました。

次に、解体後の状態の写真です。

カウンターは全て解体し、壁についていた棚や窓側の棚もすべて解体、トイレも一部の壁を残して解体しました。外周回りの壁ボード以外の造作物は全て解体したことになります。天井もボードは利用しますが照明器具は全て撤去します。

厨房の中も残っていた厨房機器は全て撤去、何もない状態にしました。

最後に、工事後の状態の写真です。

カウンターは完全に新しく造作しました。天板はバーナーで炙り加工を施したパイン材のカウンターで、立ち上がりには凹凸のあるモザイクタイルに間接照明をあて、小洒落た雰囲気になりました。バックバーも食器棚をステンレス製の既製品ではなく木製のものを造作し、お店全体が木の温かみが感じられる雰囲気に統一。窓際にはワインボトルを陳列できる棚を造作しました。外の道路からもこの棚がガラス越しにみよく見え、ボトルを沢山並べるとお店の中が隠れ、逆に本数少なくまばらに並べるとお店の中がよく見えるようになり、お店の中をどれだけ見せたいかを調整できるようになっています。

今回紹介した事例のように、居抜き物件でも残るものが利用できない場合は解体工事が必要となり、その分工事金額がかかります。事例②や事例③のお店は、解体後を見ると第2回目で紹介したスケルトン物件と遜色ないところまで解体をしました。

一般的に居抜き物件は安くお店を開くことができると言われることが多いですが、必ずしもそうとは限らず、物件状態により必要な工事内容が大きく変わり、それに伴い必要な金額も大きく変わるのです。

 

有限会社AIA/アイエィ